心臓疾患のための食生活
心臓を守る食生活
心疾患だけでなく糖尿病、高血圧、動脈硬化症などのさまざま生活習慣病でもいえることですが、栄養のバランスを考えた規則正しい食生活は、心疾患のためだけでなく、健康への必須条件である。長く続けてこそ効果があるので、気長に積極的に取り組む必要がある。
・規則正しい食生活の心得
a.栄養のバランスを考えて、1日に30食品を取る
偏食を止めて1日30食品を取れば、バランスの良い食事が取れる。
b.腹八分目を心掛け、1日3食を取る
食べ過ぎは肥満につながり、心疾患の誘因になる。肥満の人は標準体重に近づける努力が大切。極端に食事の量が減ると、必要な栄養素も不足し、血液中にコレステロールの沈着を防ぐHDL(善玉)コレステロールも減少する。
肥満の人は早食いを止め、腹八分目を心掛ける。1日に3回の食事を規則正しく取り、朝食を抜くのは止める。朝食は1日の活動源になるのでしっかり取り、夕食は軽めに取る習慣にする。
【1日30食品の数え方】
1) 献立に使った食品を重複しないように数える
例:麦ご飯→米と麦の2種類
※味噌汁の味噌や炒め物の油も1種類に数える
2) 同じ食品は1日のうち何回食べても1種類とする
3) 調理済み食品や市販の惣菜は、自分で作るものと違って原材料がわからないので、はっきりわかるものだけ数える
4) 外食も素材として使われている食品を、見て判るものだけ数える
5) 食べる量のごく少ない薬味のねぎやみょうが薬味・香辛料は栄養的に意味がないので数えない
6) 砂糖・塩・酢・醤油・ソースなどの調味料は数えないが、栄養素の補給につながるマヨネーズやドレッシング・トマトケチャップは数に入れる
7) 牛乳や果物などの間食は、栄養摂取量に占める割合が大きいので数える
・食品の選び方
a.肉・魚・大豆などの蛋白質を毎日欠かさない
お勧めしたいのは、肉類・魚貝類・大豆などの豆類、卵・牛乳などの乳製品。肉類は蛋白質源として優れており、赤身の部分を使ったり、 網焼きにして調理法を工夫する。
卵も1日1個なら、血液中のコレステロールがかなり高い人以外は心配はない。
牛乳はカルシウムやビタミンも豊富で、飲むだけでなく料理にも活用する。
動物性蛋白質の摂取が少ないと、血管がもろくなり、心臓の老化を早める。
1日に取る蛋白質のうち、3分の1以上は動物性のもので取る。
b.野菜のビタミンやミネラルが、血管を丈夫にする
野菜はビタミンが豊富で、特にA・C・Eはコレステロールが血管に溜まるのを防ぎ血管を丈夫にする。カリウムは心臓や血管を丈夫にするだけでなく、ナトリウムの排泄を促して血圧を下げるので、血圧の高い人はできるだけ野菜を取る。
野菜は生のままではなく、加熱調理すると沢山食べられる。野菜は1日300g取りたいが、特に緑黄色野菜は吸収されてビタミンAとなるβカロチンや、鉄分を沢山含むので、少なくとも100gは取る。
c.食物繊維は動脈硬化の防止に役立つ
野菜や果物に含まれる食物繊維は、腸内でコレステロールの分解産物である胆汁酸を吸着して胆汁酸の吸収を遅らせる。果物に含まれる食物繊維は水溶性のものが多く、胆汁酸を吸着する力が大きい。胆汁酸が大腸に沢山送られると、腸内細菌によって2次胆汁酸も多く作られ、大腸癌が増える。
食物繊維は腸の調子を整え便通を良くする。1日に取りたい食物繊維の量は20?25gだが、日本人の現在の摂取量は17?18gである。海藻類や豆類にも沢山含まれるので利用する。
d.動物性より植物性の脂肪を多く取る
脂肪は活動のエネルギー源として使われるが、特に植物性のものを積極的に取る。植物性の脂肪は、血液中のコレステロールを減らす働きがある。魚を除く動物性の脂肪は血液中のコレステロールを増やす働きがあるので、心疾患や高脂血症の人は控えた方が良い。
e.魚の油や豆類は積極的に取る
エーコサペンタン塩酸(EPA)は、プランクトン(水中に浮遊している微細な生物)やクロレラ(俗にいう水アカ)に豊富に含まれるので、これらを食べる魚貝類、更にそれらを食べる海獣類(アザラシ、オットセイ)に多量に含まれる。
【EPAの働き】
EPAは血小板が動脈壁に付着するのを防ぎ、血管拡張作用により血圧も下げる。血液中の総コレステロールや中性脂肪を低下させ、HDL(善玉)コレステロールを上昇させて、心筋梗塞や動脈硬化を防ぐ。
EPAに富む食品は、いわし・さば・アジ・サンマ・まぐろなどの青物の魚類で、
魚肉中に
1,0?1,5%
魚油中に
6?11%
のEPAが含まれる。
また、高級魚である鯛・ヒラメ・フグ・鯉などの魚には、EPAの量は少ない。EPAは白身の魚より赤身の魚に多い。油の乗っている旬の魚にEPAが多い。
大豆などの豆類に含まれる脂肪は、植物性なので大いに活用する。
f.油脂として摂取する時は液状の油で
ココナッツ油やカカオ油など常温で固まっているものも例外としてあるが、常温で液状の油は大抵植物性である。大豆油・菜種油・コーン油・ごま油・オリーブ油がある。
動物性の油は魚の油を除いてほとんどが常温で固まった状態になっており、肉の脂身やバター・ラード(豚の油)・ヘッド(牛の脂肪から採取した料理用の油)などがある。調理には液状の油を使った方が良い。
g.体内の酸化を防ぐ料理法が大切
常温で液状の植物油や魚の油も、日に当たる所や温度の高い所に置くと酸化しやすく、質が落ちるので、新鮮なものを使用する。
新鮮なものでも体内に入ってから酸化を起こす可能性が有り、沢山取ると動脈硬化を促すLDLコレステロールは減るが、LDLコレステロールが酸化を起こしやすくなって動脈硬化を促す。
液状の油を取るには、体内の酸化反応を抑制するビタミンEやβカロチンヲ一緒に取ることが必要である。ビタミンEは穀物や緑黄色野菜・豆類に、βカロチンは人參やパセリ・春菊など緑の葉の野菜に多く含まれる。
h.調理に用いる脂肪は1日10g以下に
調理に用いる脂肪はエネルギーが高いので、1日10g以下に抑える。
10gの脂肪とは、牛肉では
脂身付きで約70g中
脂身なしで約180g中
に含まれる量である。エビフライ100gを食べると約10gの油を取ることになる。
液状の植物油を偏って多く取り過ぎると、癌が増えると言われているので、摂取する油は20%、摂取する脂肪のうち植物性の油は50?60%、魚の油は20%、残りを魚の油以外の動物性の油で取るのが理想的。
i.コレステロールの少ない食品を取る
コレステロールは脂肪の一種で、細胞膜や副腎皮質ホルモン、胆汁酸を作る材料として大切。血液中のLDLコレステロールが増えると動脈硬化を促し、HDLコレステロールが不足すると動脈に障害が起こるので、適度にコレステロールを取ることも大切。
1日に取る食品中のコレステロールは300mg以下が良い。コレステロールの少ない食品は、米飯・食パン・そば・白身の魚・豆類である。
特に納豆や豆腐などの豆類は、蛋白質が多くコレステロールがほぼ0に近いので、血液中のコレステロールの高い人に進められる。
またエネルギーが低いので、肥満にも良い。
一方コレステロールの多い食品は、できるだけ控える。一般に内臓ごと食べるものは、コレステロールが多い。例えば鶏のモツ・豚のレバー・エビ・すじこ・魚の卵はコレステロールが多い。
j.塩分の濃い食品は控える
塩分は取り過ぎると心疾患の誘因になる。国民1人1日当たりの食塩摂取量は12?13g。 心疾患を防ぐために、1日10g以下に抑えることが望ましい。既に心疾患のある人は、8g以下、症状の重い人は5g以下にした方が良い。
塩分の多い食品は、食塩の他、干物・漬物・醤油・味噌で、料理に使う時にはなるべく量を少なくする。
インスタント食品や加工食品も塩分が多いので、なるべく控えた方が良い。日頃薄味に慣れない人は極端に塩分を少なくすると食欲までなくなるので、やや薄味と思う程度を目標にして徐々に慣れるようにする。
例えば、
・酢、レモン、柑桔類で味付けをする
・新鮮な素材を使ってそのものの味を引き出す
・ご飯の量を控えると、自然に漬物や味噌汁の量が少なくなる
・ラーメンの汁は残す
・醤油をかけたり付けたりする時は控え目にする
・ゆで卵に塩をかけない
など食べ方に注意すると、塩分の量はかなり減らすことができる。
k.糖質の取り過ぎに注意
砂糖や果物に含まれる果糖などの糖質の取り過ぎは心臓に良くない。糖質を取り過ぎると、血液中に中性脂肪が増え、血栓が出来やすくなり、動脈硬化を促す。
また糖質の取り過ぎはHDLコレステロールを減らしたり、肥満にもつながり、心臓への負担を大きくして心疾患を起こしやすい。
料理には、砂糖は1日10gを限度にして、なるべく使い過ぎない。コーヒーや紅茶を飲む時、砂糖は少ない方が良い。間食に食べる菓子やジュースも、糖質がかなり入っているので食べ過ぎや飲み過ぎに注意する。果物も果糖が以外に多く含まれ、特にバナナやカキ、ブドウは糖質が多いので注意する。
l.アルコールはビール大瓶1本が適量
少量のアルコールはHDLコレステロールを増やして動脈硬化を防ぐ。HDLコレステロールはお酒の習慣のない人より、お酒の習慣のある人の方が高い。アルコールは虚血性心疾患の危険因子とは言える、むしろ安全因子である。
今のところ良いと言われるのは1日25g位迄で、これは日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ウイスキーなら水割りシングル3杯位迄で、HDLコレステロールを増やし中性脂肪を減らさず肥満も起こらない限界と考えられる。毎日飲む人は、せめて週に1日はお酒を止め、またイッキ飲みなど無茶な飲み方も心疾患にとって危険。
不整脈のある人や中性脂肪の多い人もお酒は止めた方が良い。中性脂肪の多い人手どうしても飲みたければ、3ヶ月位お酒を止めて中性脂肪の値が少なくなってからにする。
m.コーヒーと心疾患
心疾患のある人は、1日に何杯も飲むと良くないと言われるのは、コーヒー豆に含まれる油がLDLコレステロールを増やすからである。
コーヒーはフィルターで濾過する入れ方でこの油を除けば、あまり心配はいらない。
ただし、コーヒー豆に含まれるカフェインは、脈拍を増やすことがあるので、心疾患のある人はできるだけ飲み過ぎない方が良い。